スピッツ「ヒビスクス」の歌詞の意味は?解釈と考察
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スピッツのニューアルバム「醒めない」が7月27日に発売される。
そのアルバムの中に収録される曲の中から「ヒビスクス」という歌を取り上げたい。
この楽曲はSUBARU フォレスター CMソングとして器用されることでも話題になっているのだが、歌詞は相当に奥深いものだった!?
ってことで歌詞をみてみよう。
作詞:草野正宗
1番の歌詞について
過ちだったのか あいつを裏切った
書き直せない 思い出
過ちとは何なのか?
あいつとは誰なのか?
最初のフレーズから気になるところは多々あるけれど、思い出が書き直せないということは、この主人公は何かしら過去に後悔しているということである。
もちろん、あいつを裏切ったことが後悔の原因なのだろうが、このフレーズだけでは与えれた情報は少ないので、次のフレーズをみてみよう。
幼さ言い訳に 泣きながら空飛んで
クジラの群れ 小さく見える
幼さを言い訳にするということは、自分が無知であったゆえ「過ち」は起きてしまったことが想像される。
若さゆえの過ち、なんて言葉に置き換えたらわかりやすいかもしれない。
空を飛ぶというのが具体的にどういう意味を持つのかわからないが、泣きながらという言葉と接続するということは、おそらくは「逃げようとする」ことの比喩であると思われる。
ただし、この「逃げる」とは色んな意味を連想することができる。
例えば、「肉体的逃避」ということで自殺という意味に置き換えられるかもしれないし、「精神的逃避」ということで家に引きこもるということに置き換えられるかもしれない。
ここでポイントなのは、空を飛ぶことでクジラが見えたということである。
クジラも比喩であることには間違いないが、これは何の比喩だろうか。
スピッツの「雪風」ではエイが出てきたわけだけど、ここではクジラが出てきている。
エイ=回遊魚
つまり、同じ経路をぐるぐると泳ぎ続ける魚である。
それゆえ、循環や繰り返しのイメージとして、「雪風」ではエイという魚を比喩として使ったわけだが、今回のクジラはどういうことだろうか。
クジラはそもそも魚ではなく、哺乳瓶であり、色んな種類の生き物に分別できる(学説によればカバとも分類できるのだとか)ので、むしろ混沌としてのモチーフとして、クジラを登場させているのではないか。
混沌とは現実社会そのものであり、クジラの群れとは現実社会の比喩として示された言葉。
そして、それが小さくなっていくということは、現実世界から飛び立ち、天国のような場所に向かおうとしているのではないかとイメージされる。
どうだろうか。
次のフレーズをみてみよう。
後ろめたいままの心が憧れた
約束の島で 再び
後ろめたい理由は前述の「過ち」と関係があるんだろうけど、心は何に憧れたのだろうか。
普通の生活とか、夢を追って輝いた日々を過ごしているあいつだろうか。
ちなみにここに出てくる「再び」は、次のフレーズの白い花が咲いたとかかっている。
白い花が咲いた 変わらずに
優しく微笑むような
なまぬるい風 しゃがれ声で囁く
「恐れるな 大丈夫もう 恐れるな」
武器も全部捨てて 一人 着地した
白い花といえば、ユリであったりハルジオンであったり、あるいは梅や桜なんかを想像する人が多いのではないか。
ちなみにタイトルの「ヒビスクス」とはハイビスカスのラテン語なのだとか。
タイトルにもなるくらいだから、この白い花は相当なキーワードになることが予想されるわけだが、ハイビスカスであるこの白い花には、どんな意味が託されているのだろうか。
ハイビスカス全般の花言葉は「繊細な美」とのことだが、白のハイビスカスの花言葉は「艶美」とのこと。
どちらもしっくりきそうで、しっくりこない。
ハイビスカスといえば、白い以外にも赤いハイビスカスとかもある。
つまり、この花は場合によっては他の色に変化する花だよ、ということを示唆したいがために、同じ白い花でもハイビスカスである「ヒビスクス」をタイトルにしたのではないか。
で、ここでは「白い=汚れていないもの」であり、この花は穢れていない花だが、
人によっては「赤=汚れたもの」になることもあることも示唆しているのではないか。
人によって穢れがまちまちのものと言えば、「想い」とか「魂」とかそんなものだったりする。
花が咲いたの言葉に添えられているのが「変わらずに」という言葉。
これは、この花はずっとこの地にあったものであることを示しており、以前にも何度か咲いていることが示唆されている。(まあ、再びという言葉が使われているからわかりますね)
そして、今回も何らかのタイミングでこの花はちょうど「咲いた」のである。
ちなみに、しゃがれ声で話しているのはなまぬるい風だと思われる。
それにしても、優しく微笑むなまぬるい風が嗄れ声で話すとは、どんな状況を指した言葉なのだろうか。
風を優しいと感じているのは主人公であり、これは主人公の主観の話であろう。
そして、主人公はその風から、まるで「恐れるな。大丈夫」とエールをもらっているように感じるのだという。
凄い話であるが、そう思っているならば仕方がない。
さて、最後のフレーズである「着地した」という言葉が象徴するのは、飛んでいた主人公が戻ってきたこと意味する言葉である。
もし、飛ぶというのが死のメタファーなのだとすれば、つまり、この主人公は死ではなく、生きることを選んだことを意味する。
「武器も全て捨てたとは」余計な知識を蓄えた武装はしないで、極力純粋で無垢な状態の自分で生きていこうと決めたというニュアンスであろうか。
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2番の歌詞について
ここから2番である。
悲しみかき混ぜて それでも引きずった
忘れられない 手のひら
悲しみをかき混ぜたというのは喜びとか、怒りとか、他の感情や思い出とごちゃ混ぜにしたということだろう。
簡単に言えば、悲しみを忘れようとしたわけだ。
それでも悲しみは消せないし、癒えない。
引きずっているというわけだ。
手のひらを見れば、その悲しみを思い出すのかもしれないし、手のひらは正直もので冷たくなってしまっていたり簡単に汗を拭きだしてしまったりして、自分が悲しみを癒せていないことを自覚的にさせるという意味なのかもしれない。
はたして、どんな類の悲しみなのかだろうか。
最初に出てきた「過ち」と関係はあるのだろうが。
次のフレーズをみてみよう。
言葉にする 何度も あきらめたはずなんだ
顔上げた道の 先も
何を言葉にしたのか、ここでは明示されていないが、あきらめたはずなんだ、という言葉が末尾にあることから、口にしている言葉はあきらめの言葉である可能性が高い。
先もあとに続くのは白い花であり、顔を上げた道にも白い花はあるのだ。
白い花とはそんなに特別なものではないのかもしれない。
サビの歌詞をみてみよう。
白い花が咲いた揺れながら
黒蜜の味を知って あの岬まで
セミに背中を押され
戻らない 僕はもう戻らない
時巡って違うモンスターに なれるなら
結局、白い花とは何を指したものなのだろうか。
もし、思いとか想いの類の言葉なのだとすれば、揺れて咲いたこの白い花には迷いがあるということだが…。
まあ、一度それは置いといて、別のフレーズを先にみていこう。
ここで「戻らない」といっているのはあの岬のことであろう。
岬なんてまさしく生と死の境目のようなイメージをさせる場所であるが、さらに短命の象徴であるセミをここで登場させることにより、それをさらに意識させる。
しかも、ここで出てきた蜜はよりにもよって「黒」蜜。
明らかに白い花の対比として登場させたと思われるこの黒は、汚れそのものを表しているように思われる。
が、僕は岬にも黒い蜜のある場所にも「戻らない」と言っている。
密といえば、ネバネバベトベトしてそこに留まらせようとする呪いみたいなイメージが連想される。
白い花=正義の感情
だとすれば、それが揺れていた「迷い」があったからこそ、白の対比である「黒」密にけしかけられて、岬に行こうとしてしまったのかもしれない。
やはり、黒蜜=悪魔のささやき
みたいなものなのだろう。
セミという短命であり、死の象徴に背中を押されるということは、生と死のはざまである岬に追いやられようとするが、「セミに押されて岬に戻る」みたいなことは絶対にしない。
つまり、「俺は生きてやる」と宣言するのである。
ただし、「生きる」のは限定付きであり「時巡って違うモンスターになれるなら」なんて言っている。
違うモンスターとはどういう意味かはっきりとはしないが、この主人公は正義の心と悪魔の心を宿した人物であり、過去にそれなりの後悔をしているが、それでもなんとか前を向いて生きていこうとたくらんでいる人物であるように見える。
そんな自分はまるでモンスターみたいな存在といっているのだろう。
けれど、モンスターといっても色々いる。
良いモンスターも悪いモンスターもかっこいいモンスターも不細工なモンスターもいる。
ピカチュウだってモンスターなのだ。
結局、モンスターであることに変わりはないけど、心を入れ替えて、今までとは違う自分になってこれからの道を歩く、というニュアンスを「違うモンスターになれるなら」に託しているのだろう。
最後のサビ、そしてこの歌のまとめ
咲いた変わらずに 優しく微笑むような
なまぬるい風 しゃがれ声で囁く
「恐れるな 大丈夫 もう恐れるな」
武器も全部捨てて一人 着地した
結局、大きなバックグランドは描かないようにしている。
最初に出てきた「あいつ」が最初のフレーズ以降、姿を見せることはないし、主人公がどんな裏切りをしてしまったのかはわかないように描かれている。
ただし、過ちをおかすような僕がなんとか生まれ変わって、やり直す決意をするための「蘇生」の歌であることは間違いない。そして、
空を飛ぶ、あの岬、黒蜜=ダメな自分の近くにあるもの
着地、クジラの群れ=生まれた変わった自分の近くにあるもの
という押さえ方ができるのではないか。
ということは空中はネガティブなイメージであり、着地はポジティブなイメージであることだけはわかるであろう。
そして、それを繋ぎとめるのが、なまぬるい風と白い花である。
白い花2回でてくる。
約束の島と顔上げた道である。
しかも約束の島では再び咲くと書いてあることから、何度か咲いていることがわかる。
やはり、白い花は自分の内面の「何か」を現すものなのだろう。
そして、ネガティブ路線である2番のサビでは揺れていたのだから、白い花自体は「良いもの」である可能性が高い。
具体的に「こういう歌である」と言い方はできないけれど、この主人公が何を考え、次に何を目指そうとしているのか、その輪郭みたいなものは見えてきたのではないだろうか。
あなたは、白い花とは何の比喩だと思いますか?
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