また、BUMPのグッズがダサい。

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グッズの発表を受けたとき、一部の信者を除いて、そう思った人が多かったのではないかと思う。

もちろん、「いや今回はわりとありでしょ」って人もいれば、「前よりは今回のやつかっこよくね?」という人もいたことと思う。

まあ、デザインなんて好みの話であり、絶対的にこれが正しいなんてものはないのだから、思い思いの意見を述べたらいいとは思う。

だから、僕は言う。

BUMPのグッズ、今回もダサいよ、と。

ところで、音楽ファンであれば、誰だって好きなバンドのTシャツの一枚や二枚は持っているだろうし、音源よりもグッズをメインにお金を落としている、という人も多いことと思う。

実際、バンドマンのライブ出演のギャラなんて微微たるもので、バンドのグッズというのは、自身のお金を稼ぐことができる数少ない手段のひとつなわけだ。

極端なことを言えば、ライブが黒字になるかどうかは、グッズにかかっていたりもするわけだ。

ちなみに、BUMPのグッズをデザインしているのは、BUMPのベースであるチャマである。

けれど、ほとんどのバンドマンは自分でグッズをデザインすることはなくて、デザイナーにお願いをすることが常である。

キュウソのように専属のデザイナーにお願いするバンドもいれば、イベント会社経由でデザイン会社に丸投げしているバンドもいる。

ところで、アーティストの制作した音源の制作過程に関心を示したり、その音源ができるまでの物語に一喜一憂する人はいても、バンドTシャツが完成するまでの工程やドラマに想いを馳せる音楽ファンは少ないと思う。

そして、どれだけ愛や平和、夢や希望を声高に叫ぶバンドマンでも、こと自身のグッズ制作に関しては、デザイナーを踏み倒し、搾取しまくることで成り立たせていることが常だったりする。

バンドごとにグッズのデザイナーをどこに依頼しているのかは様々だし、メジャーバンドであれば、会社に一任していることも多いわけだが、(要はバンド側はほぼほぼノータッチ)デザイナーの視点に立てば、発注→制作→納品の流れはわりと地獄で、常にデスマーチであることだけは間違いない。

まず、依頼されてから作るまでのスケジュールは、はっきり言ってめちゃくちゃなことが多い。

こんな短期間でできるかっ!みたいなタイミングで発注がくる。

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デザイナーだって、ひとつの仕事に関わりっぱなしならそれでもいいが、基本的にはデザイナーのひとつの仕事の単価なんて知れているわけで、並行して色んな仕事に着手しなければならず、基本的にスケジュールは泥沼化している。

おまけに発注者との意思疎通は難しいし、発注内容もふわっとしていることが多い(むしろ、指示がないことの方が多い)。

なのに、デザイナーがあげてきたデザインがダサくて、それをグッズとして採用されなければ、容赦なくノーギャラになってしまうこともあるわけだ。そのデザインを作るのに、どれだけ時間を割いたとしても。

プロなんだからそれくらい当たり前でしょ?と思う人もいるかもしれないが、飲食店に入ってそこで食べたメシが不味かったからお金払わないわなんて言ったら一発で食い逃げで捕まる。

けれど、デザイン業界は往々にしてこういうことがある。

ミュージシャンだってひとつのシングル曲をリリースするためにいくつも曲を作るし、それと同じことじゃん?と思う人もいるかもしれない。

まあ、構造としては同じだし、ミュージシャンも言わば「会社から搾取される存在」なわけで内実としては似ているのだが、大きく違うのは、音楽には「印税」という概念があることと、セールスが伸びればその分たくさんのお金がもらえるということである(もちろん、事務所との契約次第にはなるわけだが)

簡単に言えば、時間をかけてクオリティの高いものを作れば、その分、売上枚数という数字になって、しっかりとリターンが返ってくる可能性が音楽制作にはあり得るが、デザイン、少なくともグッズの発注の場合、そういうものは基本的にない。

そのグッズがソールドしても貰える額は変わらないのに、人気がなかったら、値切られたり、払うべきギャラを払わないようなことすら多いのだ。この業界は。

そもそも、デザインの流れをみていけば、最初はノーギャラでデザインを行なって、あげたデザインを見て「これなら金を出す」みたいなノリでデザインが決まることだって、あるわけで。

デザイナーには悪い意味で「契約」という概念のない、無法な地帯で仕事を請け負いがちなのである。

なによりきついのは、グッズを作る上で、バンドメンバーとデザイナーが直接話す場なんてほとんどないのに、バンドが望んでるものを汲み取って、デザインしなければならないことである。

もちろん、バンドマンが納得できなければボツになるし、文句を言われまくられるにも関わらず。

しかし、これって変な話である。

バンドマンにとって、物販グッズは最大の収入源の1つなわけだ。

けれど、バンドマンはグッズのデザインに関心を持っていないし、誰がどのような手順でそれを作り、どれくらいの予算がかかったのかすらあまり理解していないことも多い。

仮にこの辺りに理解があるバンドマンであれば、事前にデザイナーに的確な指示ができるし、理解あるスゲジューリングで発注するとともに、ボツデザインが生まれにくい状況が生まれるからデザイナーのモチベーションも上がり、結果として、より良いデザインのグッズが生まれたりするのである。

餅屋の作る餅屋が一番美味しいわけで、それはBUMPのグッズを見てもらっても判るわけで。

グッズに限らず、フェスのロゴや冊子、あるいはライブ前に配られるチラシ、各アーティストの公式HPなどなど、デザインというのは音楽の現場と密接な関係を持っている。

僕たちは音楽に対する物語には関心を持つことはあっても、デザインに対する物語には意識が希薄だったりする。

けれど、実はアーティストの人柄というのは、そういう「別の部分」にこそ、宿ったりするものかもしれない。

アーティストのグッズがダサい場合、考えられるアーティストの態度は三つである。

根本的にデザイナーを信頼しており、それがお前の本気なら受け入れてやるし、ノーギャラでやり直しなんてさせないよ、的な男気のあるタイプ。

あるいは、根本的にデザインにまったく興味がなく、どんなデザインでもオッケーにしてしまうタイプ。

あるいは、デザイナーへのオーダーがギリギリかつ無茶苦茶なため、デザイナーがサジを投げ、「事故のような商品」で販売する他なくなってしまった的な、だらしのないタイプ。

さて、あなたの好きなバンドのグッズはどうだろうか?

一度考えてみたら、面白いかもしれない。(もちろん、ここに書いてあるのは事例の一部のため、そうじゃないことも往々にしてあることは承知してもらえたら幸いである)

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