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スピッツ「渚」の歌詞の意味について考えてみたい。

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作詞:草野正宗
作曲:草野正宗

歌詞

ささやく冗談でいつも つながりを信じていた
砂漠が遠く見えそうな時も
ぼやけた六等星だけど 思い込みの恋に落ちた
初めてプライドの柵を越えて

風のような歌 届けたいよ
野生の残り火抱いて 素足で走れば

柔らかい日々が波の音に染まる 幻よ 醒めないで

ねじ曲げた思い出も 捨てられず生きてきた
ギリギリ妄想だけで 君と

水になって ずっと流れるよ
行きついたその場所が 最期だとしても

柔らかい日々が波の音に染まる 幻よ 醒めないで
渚は二人の夢を混ぜ合わせる 揺れながら輝いて

輝いて… 輝いて…

柔らかい日々が波の音に染まる 幻よ 醒めないで
渚は二人の夢を混ぜ合わせる 揺れながら輝いて

音について

この歌はスピッツの歌にしては、珍しく電子音がサウンドの主軸となっている。

ピロピロピロと鳴っている音と、たったらたったらと鳴ってるふたつの音がある。

イヤホンで聴けば、左右それぞれから別の電子音が鳴っている。

ドラムは、16分でシンバルを刻んで、バスドラは四つ打ちで、Bメロからスネアが入り、4回目のバスドラのタイミングで音を打つ。

そこから1番のサビまでは同じリズムを刻む。

ベースだけみてもスピッツにしては特殊な歌で、1番のサビまでベースは登場しない。

また、最初のさびではベースのくせにサビのメロディー追いかけたり、田村ベースのくせに音数が少なかったりと、とにかくいつものスピッツらしからぬ音のオンパレードなのである。

ちなみに2番に入るとバスとスネアのリズムはそのままでタムタムが登場する。

タムを使ったこういうリズム回しも今までのスピッツではあまりやらなかったパターンのように思う。

要はそれだけ試行錯誤していたことであろう。

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歌詞について

この歌の最大に特徴は「僕」という一人称が出てこないことだろう。

「君」という言葉は出てくるし、「二人」という言葉も出てくるし、「思い込みの恋」という言葉を使うことで二人の微妙な間柄を表現しているのに、直接的に「僕」という一人称は出さない。

とはいえ、歌詞をみると、明確に「僕」の視点で一夏の淡い恋について述べていたりするのだが。

ところで、この二人、何とも不思議な距離感を歌っている歌のように感じる。

「ささやく冗談」を言い合える距離に二人はいるわけだ。

けれど、六等星がぼやける=思い込みの恋=プライドの柵を超える、というわけで、イメージとしてそれまでは友達のような間柄だった人と恋に落ちてしまうような「変化」が見え隠れするわけだ。

こんな恋なものだから、直接的に思いを伝えるのではなく、風のように届けてほしいと願うのかもしれない。

あわよくば、波打ちぎわの砂浜のように、ゆっくりと恋心がしみ渡ればいいのに、と思うのかもしれない。

その一方で、こんなフレーズも出てくる。

「ねじ曲げた思い出も 捨てられず生きてきた
ギリギリ妄想だけで 君と」。

これってどういう意味だろうか?

この歌は「ぼやけた六等星」「思い込みの恋」「野生の残り火」「幻よ醒めないで」という言葉からもある通り、この恋は現実とは少し違うものであることを匂わせる言葉を重ねてきている。

この「ギリギリ妄想」もこことリンクする言葉とは思われるのだが、何を意味するのかがいみいちピンとこない。

そもそも妄想とはどこからの話なのか?

この恋がそもそも妄想なのか?

それとも君が僕に対して妄想をしているということなのだろうか?

この捉え方によっては、この歌の輪郭が大きく変わるわけだ。

けれど、この歌を構造としてのみ捉えると下記のような結論を出すことができる。

それは、

想像と現実

陸と海

というものの対立。

そして、その狭間にある渚というものを歌っているからこそ、この歌はどこからが現実でどこからが嘘なのか曖昧な歌になっているのである。

今はただ、波打ちぎわの砂のように、嘘が現実に少しずつ染み込んでほしいと願うばかりなのかもしれない。

結局、この歌はあくまでも「狭間」を歌った歌だからこそ、その先はどうなるのか?その後はどうなるのか?という所まで踏み込んでも答えは出てこないわけだ。

スピッツも悲願のブレイクを達したタイミングでこの歌は作られた。

想像が現実になってしまったことで、現実そのものがまるで想像のように現実感のないものに変わってしまったタイミング。

だからこそ、こんな歌詞が出来上がったのではないか、と改めて歌詞を振り返ると、そんなことを思ったりするのである。

いずれにせよ、スピッツにとって、個人的には異端な歌に感じる次第である。

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