スピッツ「ハチの針」の歌詞の意味は?解釈と考察!

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スピッツの「ハチの針」の歌詞について考えてみたい。

作詞:草野正宗
作曲:草野正宗

耳塞ぐ手を離して聞いた 魔女の予言
怖がるほどの地獄ではなく
分かれ道 松明もってより暗い方へ
子供の顔で鈴の音を待つ

主人公は最初、耳を塞いでいたわけで、現実世界で嫌なことがあったのだろう。

つまり、リア充やパリピとは対極な主人公なのだ。

なんとなくスピッツっぽい主人公だなあと妄想してしまう。

で、その耳を塞ぐ手を離して「魔女の予言」を聞くのだが、これは何の比喩だろうか。

フレーズを読み進めていくと、「分かれ道」という言葉を見つける。

ということは、この主人公は人生の進路に迷っていたわけであり、「魔女の予言」とは主人公の進路について述べられた言葉であることが想像される。

例えば、「音楽でご飯が食べたい」という夢があったとして、魔女の予言は「ブルーハーツのようはカッコいいバンドにはなれないけれど、音楽にシーンの隅っこを噛み付くような犬にならなれるかも」みたいなことを言われたのかもしれない。

スピッツは、そうであったように。

で、そうだとすれば、音楽でメシが食える可能性があるということを意味するわけで、完璧な理想通りではないにしても、そこまで絶望する必要はないわけで、そんな温度感を「怖がるほどの地獄ではなく」というフレーズに凝縮しているのかもしれない。

実はこのフレーズ、スピッツがデビューした当時の方向性になんとなく似ているような気がするのだ。

どういうことか。

スピッツは最初、売れ線の音楽を作らない道を選び、ゆえになかなか売れない厳しい時代を過ごした。

「松明もってより暗い方へ」とは、そんなスピッツの音楽的な拘りを表現している言葉のように見えてくるわけだ。

そして、好きなようにやってもそのうちなんとかなるだろうとわりと呑気だったその当時の心境が「子供の顔で鈴の音を待つ」に現れているように感じるわけだ。

松明=自分たちの作る曲

暗い方へ=売れ線とは反対の路線

子供の顔=大人の顔色伺わず自分のやりたいように

鈴の音=成功すること

みたいな感じの解釈である。

では、次のフレーズをみてみよう。

どうしたらいい?これでもいい?
ハニー どでかいヤツの足下
僕のこと捕まえたいとか なぜ?
そんなのもうバレバレ キザに
狂った今を生きていこう
ハチの針だけ隠し持って イキがれ

ハニーとは「甘いもの」という意味と、恋人という意味合いでの「彼女」という意味と、ふたつの意味がある。

この歌では「君」という言葉は使わないで、ハニーという言葉でそれを代用している。

当然気になるのが、「ハニー」とは誰を指しているのかということだが、それはひとまず置いておこう。

それよりも先に気になる代名詞があるのだ。

どでかいヤツの「ヤツ」である。

これは誰なのだろうか。

どでかいとは図体か、態度かのどちらであろう。

で、もし先ほどからなぞっている「主人公は初期の頃のスピッツ」的な考えでそれを当てはめてみると、それは「音楽でメシを食ううえで強い力をもっている偉い人」ではないかという推測が生まれる。

例えば、レコード会社の社長とか、イベンターの偉いさんとか、音楽番組のブッキングに影響力のある芸能人とか、力の強い事務所とかなのだろう。

そんな「偉いもの」=どでかいヤツと表現しているのだとしたら、その足下にいるというのとはそいつら「側」にいくということだろうか。

でも、それなら「足下」ではなく、「懐」とかそんな言葉を使うのではなかろうか。

だとすれば、媚びて好かれるのではなく、目線に入らないような場所で、でもなんとか同じ土俵で戦う、みたいなニュアンスを「足下」という言葉で表現しているのではなかろうか。

だからこそ、そんな捻くれた自分を捕まえたいなんてなぜ?と尋ねてしまうのである。

ちなみに、捕まえたいと考えているのはハニーだと予測したうえでの解釈である。

そして、この解釈は後ろのサビの歌詞との対立構造を明確にすることで、よりスムーズな解釈が成り立つと思う。

媚びようとしたって見透かされる世の中。

それならむしろ、自分の信念貫き通して、(それをあえてキザという言葉で表現している)狂った今を生きていこうよというわけだ。

どでかいヤツの足下にいること=キザな生き方=イキがれ、というわけである。

そして、そんな反骨精神で生きるからこそ、いざというときは反撃ができるように、ハチの針を隠しもちながら、信念貫き通して生きていこうぜ(イキがれなんて言葉で表現しているが)、というわけである。

ハチの針の「ハチ」とカタカナで表現しているのは、この言葉が比喩であることを強調するためである。

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次のフレーズをみてみよう。

2番である。

賢そうな物腰で 話しかける亡霊
バカにもわかるように導かれる
でもすでに気づいちゃったんだ 甘い声の向こうで
ウラハラな汚れてる LOL

信念を貫かず、物分りよく世渡りしているような人間を「賢そうな物腰で話しかける亡霊」と表現している。

わざわざ亡霊という言葉を使うあたり、商業音楽を魂を売ったアーティストは全てマサネムにとっては「亡霊」と思っていたのかもしれない。

まあ、次に導かれる、という言葉を使っているから、この亡霊はアーティストというよりもレコード会社の人とかそういう感じなのかもしれない。

こんなふうにしたら売れますよ!売れ線の曲書いて、タイアップつけたら、きっといけますよ!みたいなことばかりいって「音楽」の話はしないで「金儲け」の話ばかりする輩みたいな感じだろうか。

けれど、そんな甘い言葉にはウラがあるわけで、売れている間はチヤホヤするけれど、売れなくなったらポイ捨てすることがわかっているのだろうから、余計にその言葉に乗っかりたくないわけである。

次のフレーズをみてみよう。

凄いよ 泳げるの?ハニー 滅びてなかったゲンゴロウ
バラバラがまとまる 反抗の風
虹よりさらに鮮やかに くすんだ空を彩る
光の玉打ち上げ ワザと見つかれ

ハニーなのにゲンゴロウとは面白い話である。

まあ、商業音楽に魂を売らずやりたいことやり続けているアーティストを「ゲンゴロウ」と例えたのかもしれない。

絶滅しかけている前時代な人たち、というニュアンスだろうか。

泳ぐというのもひとつの比喩で、「媚びない音楽」をやってる人いたんだ!みたいな喜びに収斂されるのだろう。

売れ線じゃない音楽は基本的に耳当たりが悪い。

だから、一発聴くだけではほとんどの人からしたら「良い」とはなりにくい。

だから、聴いていてもなんだかバラバラに感じるんだけど、ギターもベースもドラマもメロディーも歌詞も、はみ出したものそれぞれがまとまれば、逆に「ひとつになる」化学反応も起こるのだ。

スピッツの音楽なんて、まさしくそうである。

そんなスピッツの音楽が虹より輝いてくすんだ空も彩るのである。

こうやってしっかり信念を身体に刻みこめば、「大人」に見つかって資本主義の荒波に晒されようが、変に売れてしまおうが、怖いことなんてないのだ。

光の玉を打ち上げて、みつかってしまえ!とはそういう覚悟の表れなのかもしれない。

次のフレーズである。

シラフで恥を投げ捨て宣言しましょう!
そんで最低限君に届けばいいなと
だから邪魔をしたいんだったら勝手にやっとけ
しかし僕らにゃ通じないよその類のマインドゲーム
消せない胸のピースマークと夕陽の色
忘れないだろうキラめいた汗と希望

このフレーズもまさしくの草野マサムネのスピッツとしてこれからの音楽に対するスタンス、そしてファンとの向き合い方としての「本音」なのではなかろうか。

ここでいう僕らとは、スピッツとスピッツのファンのことなのだろう。

だから最低限君に届けばいいのである。

ある意味、「醒めない」と同じモチーフをこの歌でも歌っているわけである。

で、ファンが喜んでくれるなら「不要な媚び」は不必要で、周りの大人があれしろこれしろ言っても「僕らはそんないうこときかないから」と言えるわけである。

そんな野心をピースマークという言葉と夕陽の色で表現する辺りが情緒的である。

煌めいたではなく、キラめいたと表現するあたり、そこでかいた汗は必ずしも良いものでも綺麗ものでもないけれど、その男臭さ必死さみたいなものが余計に鮮明に見えてはこないだろうか。

最後のサビてわある。

どうしたらいい?これでもいい?ハニー どでかいヤツの足下
僕のこと捕まえたいとか なぜ?
そんなのもうバレバレ キザに 狂った今を生きていこう
ハチの針だけ隠し持って イキがれ

だから、この歌の僕もスピッツのことであり、ハニーとはスピッツのファンのことを指しているのではなかろうか。

僕のことを捕まえたいとか なぜ?

とはこんなおっさんの音楽なのに、なんでここでも敬愛して聴いてくれているの?という問いかけなのかもしれない。

というよりも、おっさんになったスピッツが、初期の頃のスピッツを妄想して書いた歌という感じなのかもしれない。

どうしたらいい?これでもいい?とファンに尋ねながら、でっかい力のあるアーティスト(例えば、エグザイル?)なんかの足下でひっそりと自分にしかできない音楽を鳴らし続けるスピッツ。

自分らしい「キザ」を振りまいて、自分らしい「イキがり」方をして、ハチの針を持ちながら、音楽業界を生きていくのである。

昔のおれたちのスタイルを鮮明にさせることで、これからもスピッツはこういうスタンスでいくから、とそんな決意を表明した歌なのではないかと個人的には解釈したのでした。

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