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電車に乗っていた。

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車内はそれなりに混んでいて、中年のおじ様やおば様で溢れかえっている。

当然、電車の座席も満員で、座席前では吊革を持って、だらんと項垂れている人もチラホラといる感じ。

僕はトビラの近く、電車を出入りする人からしたら、とてもうっとしい位置にいた。

電車は無機質な音をたてながら、駅に向かって走っていく。

このあと、何が待ち構えているのかもしらずに……。

と、出来の悪いラノベのような書き出しで今回の記事は始めてみたが、これは今日、僕自身が目撃した話である。

事件が起こったのは、電車が次の駅に到着して、その駅のお客さんを乗せた時である。

とんでもない輩が車内に乗り込んできたのだ。

張り詰めていた車内の空気がなおいっそつ張り詰めて、誰もがぎこちなくその輩を覗きつつも、視線は合わせないように俯きがちで挙動を伺う。

視線があったらやれてしまうと言わんばかりに。

それほど相手は「やばいオーラ」を持っていた。

そして、みんな、それに恐れ慄いていた。

とんでもないバカップルだった。

バカップルは電車に乗り込むと、トビラとトビラの間くらいの部分を陣取ったのが、これがとんでもない「バカさ」なのである。

それなりに混んでいる車内でありながら、おでこにチューをしてみせたり、少し電車が揺れたら不衛生なロン毛の男が、カピバラをデブにしたような女を抱きしめて「大丈夫?」と囁きあってみせたり、女が男の股間あたりをズボン越しに触ってみせたりと、なかなかに破天荒なプレイに勤しむのだ、

こちらからしたら、なかなかに困る。

目の前でブラジルばりのサンバ的コミュニケーションが展開されると、どういう対応をしたらいいのか困ってしまうわけだ。

こちとら、KANA-BOOM「NAMiDA」を聴きながら、今日も記事をなんとか更新するぞと息巻いて、スマホとにらめっこしつつ、メモ帳とTwitterを往復にするだけの業務に勤しんでいるというのに、とにかく捗らない。

と、こんなことを書いてるソバから、女は口を尖らせて始めた。

明らかなるキス顔のお出まし。

止めろ。お前のビジュアルでは、キス顔をしてもただのホラーだ。

ホラー的な意味で15禁になってしまうから、公衆の面前でそんな顔面晒しちゃいけない。今すぐ隠せ隠せ。

待て待て。ロン毛。お前、何、女の顔をうっとりと見つめて「お前が求めるならしゃーねえな」みたいな顔してるんだ。カピバラの飼育員なら、しっかりと躾してやれ。

ってか、公衆の面前で臭い口臭を撒き散らすようなマネをするんじゃない。家でやれ、それ。

なーんて思いながらバカップルの動向を見てしまったわけだが、この時ひとつの考えが頭を掠めた。

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ああ、そうか今のTwitterに蔓延るライブキッズに足りていないのは、これなのかもしれない、と思うようになったのだ。

すぐにライブのマナー違反をネット上で晒したり、そのライブが楽しかったことよりも、楽しくなくなってしまったことをひたすらネットに書き込む勢が多い。

そして、邦ロック界隈ではライブマナー論争を幾度となく展開しがちである。

が、そのバカップルを見ていたときに思ったのだ。

アーティストとお客の間にバカップルと同じような「愛」が芽生えていたら、周りなんてどうでもよくなるんじゃないか、と。

だって、そのバカップルは間違いなく、僕含めて周りのことなんて一切気にしていない。

二人だけの世界がエンドレスに展開されているわけだ。

無邪気に男は女のことを、女は男のことを愛しているだけの幸せな世界がずっと続いてるわけだ。

だから、車内だから家だろうが関係なくイチャつくことができるわけである。

これは、ライブだって同じだと思うのだ。

もし、アーティストとお客の間に燃えるような「愛」が育まれたら、周りがどうとかマナーがどうとか、どうでも良くなる。

そんなものを超越するような、感情と想いで胸がいっぱいになるわけだ。

つまり、今こそ僕たちはバカップルを見習って、周りを気にせず、大切なものにだけ視点を向けるような潔さを身につけるべきではないか、と思うのだ。

そうなのだ。バカップルを参考にしたら、ライブマナー論争なんて、一瞬で終わるのだ。

眼差しを向ける相手を間違えている。

愛してるものにその眼差しを向けてやれ、というわけだ。

世の中、バカにできるものなんて一つもないのだ。

バカップルにすら、学べることはたくさんあるわけだ。

あと、みんな、バカップルのように「幸せな人間」になれば、周りに対しても寛容になるから、一石二鳥だったりするし。

そんなことを思いながら、僕は電車を降りたのだった。

ロン毛とデブのカップルに幸あれ。

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